11月24日。上野公園。落葉。
上野公園に隣接した東京芸大のキャンパス内の美術館に到着。
東京芸大教授の河北秀也さんの退任紀念の展示会。
河北さんは焼酎「いいちこ」の広告デザインを30年担当されてきた人。
入場料は無料。写真撮影もOKでした。
場内に入るといきなり電車の車両を模した展示室。
比較的小さいサイズの展示物を電車の吊り広告風に展示。
河北さんが過去に手掛けていた営団地下鉄のマナー向上ポスターなども。
1979年当時は、地下鉄のホームでも喫煙可能だったのですね。
電車の車両風な展示室を出ると、
いいちこのポスターの怒涛の展示。各ポスターのサイズはB0(ビーゼロ)。
広告業界では「B倍」と呼ぶらしいです。横幅が1メートルくらい。
ちなみにB1は「B全」なんだと。B5がジャポニカ学習帳とかのノートのサイズですね。
1984年4月から2014年までの30年間続いているポスターシリーズ。
最初は銀座線と日比谷線の駅構内のみで細々と始まったらしいのですが、
そしてだんだん予算がかけられるようになり、
雑誌広告やTVCMの露出が増えていったのだと思います。
毎月1枚とクリスマス特別版を加えて年間13枚で400枚弱。
その全てが展示されていたかわからないけど、
とにかくその数量と30年間ブレないコンセプトに圧倒されました。
昨日のことはもういいです。 撮影地:ハワイ
秋の日の、(読点) 撮影地:ハワイ
黙ってしぶきを浴びている。 撮影地:アイルランド
そしてテレビCMの映像が流れるビデオブースも。エンドレスなビリーバンバン。
iichikoの広告デザインの世界観を存分に浴びることができました。
いいちこの広告デザインは以前から素晴らしいとは思っていたけど、
それ以上に、こんな自由で甘く自省的でナルシスティックなものが
永くビジネスとして成立しちゃうことに対する嫉妬みたいなものがあった。
でも、ひとりで酒を呑むってそういうことだと思う。
とくに蒸留酒。職場の忘年会の「とりあえずビール」とは立ち位置が違う。
いろんな分野で結果を出そうとしている大人が、ふとクリティカルな思考を
リセットするときに、心に寄り添う商品として売りたいんだろうし。
世界じゅうで撮られた素晴らしい写真は、「自省ナルシスティックモード」に
入った大人の為の絵本。だから思秋期を気取る少年みたいなポエムが馴染む。
でも、大人の鑑賞に耐える絵本を創り続けるのは並大抵のことではないはず。
河北さんのこれまでの自身の仕事を振り返ったテキスト。
やっぱりこの人は「自省すること」に対して大真面目でした。
「努力してきた自分」に対する照れが全くない。だからブレない。
一連のiichikoの広告デザインは、表層だけを見ると、
お気楽に「いぶし銀のクリエイティブ」を気取ったスカしたものに見えるかもしれない。
それでも、大真面目に30年続けてきたという蓄積の裏にある想いの強さ。
「ただ一つ考えているとすれば、今を生きる自分のことだけである。
当然といえば当然なのだが、自分は「いいちこ」という商品をリードしていくに
あたいするのか、リードしていくのに何を知らなければならないのか。
美術、音楽、科学、スポーツ、経済、家庭、企業、政治、行政、宗教、戦争・・・」本当にこの人は照れが無い。
媒体としての自分自身に対する自負と危機感のひとりごちのドラマが、
彼の心の内側の劇場でギラギラし続けている。
空想の惑星で。 撮影地:ニュージーランド
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